電動ベッド分野に関する某案件では、特許権者(本件の一審原告、二審控訴人)が、自身の特許権を某社(一審被告、二審被控訴人)の製品に侵害されたとして、裁判所に対し当該会社を起訴した。当該会社は当所に代理人を委託した。当所は、委託を受けた後、積極的に訴訟対応を行いつつ、中国国家知識産権局に対し、懸案特許について無効宣告を請求した。そして、訴訟対応段階で多次元的に証拠を揃えて抗弁した結果、最終的に、当所が代理したクライアントは、懸案特許の一部請求項の無効化に成功しただけでなく、訴訟案件の一審及び二審の双方で勝訴した。当所は、クライアントに対し、プロフェッショナルで包括的、良質且つ効率のよい法的サービスを提供することで、効果的にクライアントの合法的な権利と利益を守った。
懸案特許における懸案製品とは異なる技術的特徴が公知の常識と認定された場合には、懸案製品が懸案特許の保護範囲に含まれると認定されるリスクがあった。そのため、懸案特許の請求項が無効宣告を受けた際には、無効宣告決定書に基づき、懸案特許における懸案製品とは異なる技術的特徴が公知の常識とは認定されなかった旨を速やかに裁判所に説明することが非常に重要であった。
本件の一審判決後に、中国国家知識産権局は、懸案特許について無効宣告請求審査決定書を発行し、懸案特許の請求項1及び3は無効証拠1及び2の組み合わせに対し進歩性がないため無効である旨と、請求項2に基づき懸案特許の有効性を維持する旨を宣告した。その際の証拠1は特許文献であり、証拠2は定期刊行誌で発表された文章であった。懸案特許における懸案製品とは異なる技術的特徴は、懸案特許の請求項1の特徴部分に記載されていた「前記固定構造はゴムリングを更に含み、前記ゴムリングは前記接続ピンの両端に同軸に固定される」との技術的特徴であった。当所は、最高人民法院(最高裁判所)に対し、懸案特許の無効審査決定は懸案特許の請求項1における「前記固定構造はゴムリングを更に含み、前記ゴムリングは前記接続ピンの両端に同軸に固定される」との技術的特徴を公知の常識とは認定しなかった旨を速やかに説明した。よって、最高人民法院も一審裁判所と同様に、懸案製品は懸案特許の請求項1における「前記固定構造はゴムリングを更に含み、前記ゴムリングは前記接続ピンの両端に同軸に固定される」との技術的特徴を含んでおらず、懸案特許権を侵害していないと認定した。
控訴人が提出した証拠を利用して懸案特許と懸案製品との構造の違いを説明したところ、より容易に裁判所の支持を得ることができた。異なる特徴に存在する「固定」との用語について、当所は、控訴人が一審時に提出した公知の常識の証拠に基づき、懸案製品におけるプラスチックリングと接続ピンとの間に固定接続関係はないと主張した。控訴人が提出した公知の常識の証拠は、軸上の部品の固定方式には周方向の固定と軸方向の固定が含まれることを示していた。これについて、当所は、被告侵害製品におけるプラスチックリングと接続ピンは軸方向の固定関係でも周方向の固定関係でもなく、接続ピンをプラスチックリングの孔内に取り付けた後、これらの間には隙間が存在するため、懸案製品におけるプラスチックリングと接続ピンは決して固定接続の関係にはなく、自ずと接続ピンの両端に固定されることもない旨を詳細に分析した。これにより得られた懸案製品は懸案特許の請求項2に限定される技術方案とは異なるとの主張は、裁判所により支持された。
均等侵害であるという控訴人の主張に反論するために、懸案製品における関連部品の作用について詳細に説明した。控訴人は、懸案製品におけるプラスチックリングの大径部と懸案特許のゴムリングは構成が均等であると主張した。しかし、当所は、懸案製品におけるプラスチックリングの大径部の作用は懸案特許のゴムリングが奏する作用とは完全に異なる旨を詳細に説明した。この点は、裁判所が最終的に両者の構成が均等ではないと認定する上で極めて重要な役割を果たした。
懸案特許における関連の記載を用いて請求項内のキーワードの意味を解説したところ、より容易に裁判所の支持を得ることができた。懸案特許の請求項1における「前記固定構造はゴムリングを更に含み、前記ゴムリングは前記接続ピンの両端に同軸に固定される」との技術的特徴の「両端」について、控訴人は、「モータ固定ブラケット又はヒンジ継手の両サイド或いは両側を意味し、接続ピンの中点又は中央部位置に位置することを意味しない」と主張した。これについて、当所は、「控訴人が主張する『両サイド或いは両側』及び『接続ピンの中点又は中央部位置に位置することを意味しない』の範囲には両端が含まれているが、両端よりも遥かに範囲が広く、「両端」の一般的理解とは一致しない」と主張した。また、当所の主張を証明するために、当所は、懸案特許の別の箇所における技術的特徴の「両端」に関する記載を組み合わせるとともに、懸案特許の具体的実施例及び図面に基づいて、別の箇所の技術的特徴における「両端」の意味を詳細に分析することで、当所による「両端」の解釈の正しさを的確に説明した。最終的に、当所のこの主張は裁判所に支持された。
字典等の補助ツールを用いて、懸案特許内のキーワードにつき解説した。懸案特許の明細書では、「ゴムリング」の作用について、「ユーザがベッドボードの高さを調節するためにリニアモータを起動する際には、当該固定構造が有し得る軸方向の隙間がゴムリング4の存在により埋められるため、ノイズが大幅に低下する」と記載されていた。これについて、当所は『現代漢語大詞典』を証拠として提出し、「埋める」とは「満たす」や「補足する」との意味であるため、懸案特許に記載されている「当該固定構造が有し得る軸方向の隙間が埋められる」とは、「接続ピンの軸方向における部品同士の隙間がゴムリングによって除去される」と解釈すべきであると主張した。具体的には、「懸案特許では、図1に示されているように、ゴムリング4を接続ピンの両端に設置して、金属材質の接続ピン6における位置規制部と金属材質のモータ固定ブラケット11における一方のアーム11bとの隙間、及び、金属材質のモータ固定ブラケット11における一方のアーム11aと金属材質のサークリップ5との隙間を埋めることで、接続ピン6を軸方向に移動し得ないよう軸方向にロックしている。こうすることで、これらの金属部品と各部品が接続ピンの軸方向において衝突するとの事態を回避して、軸方向のノイズを低下させるとの目的を達成している。一方、懸案製品の軸ピンには多くの隙間が存在するため、ピン軸上の軸方向の隙間を埋めてノイズを大幅に低下させるとの技術的効果は奏されない」と主張した。